資料報告

PVC及びDEHPの安全性についてのq&a

1)DEHP(DOP)は、発ガン性があるのでしょうか?
A:DEHPはこれまで、ラットの肝臓に腫瘍を起こすことが報告されてきました。これはラットやマウスの肝細胞中にあるベルオキシゾームと呼ばれる微小体が増殖することによりガンの原因となる為です。しかしながら、これはラットやマウス特有のものであり、ヒトを含むその他の生物では起こらないことがわかってきました。さらに2002年2月には国際的に権威のあるLARC(WHOの下部組織)の会議に於いてDEHPの発ガン性のランクは2B(ヒトに対して発ガン性が有る可能性がある)から3(ヒトに対する発ガン性については分類できない)に改正しました。これはお茶や水道水(塩素処理した飲料水)などと同じレベルで、コーヒーなどより低いランクであり、DEHPは発ガン性のリスクが極めて低い物質の1つと言えます。
IARCによる発がん性分類
記号 分類 分類事例
化学物質(群) 混合物
グループ1 発がん性がある アスベスト・塩ビモノマー(VCM)・2,3,7,8-TCDD・カドミウム・ベンゼン アルコール飲料・たばこの煙・すす 88
グループ2A おそらく発がん性がある ベンゾピレン・アクリルアミド・ホルムアルデヒド・紫外線 ディーゼルエンジン・排ガス 64
グループ2B 発がん性がある可能性がある アセトアルデヒド・スチレン・ウレタン コーヒー・がぞりん・(アジアの伝統的)漬物 236
グループ3 発がん性について分類できない カフェイン・水道水(塩素殺菌)・DEHP・塩ビ樹脂(PVC) お茶(紅茶・緑茶) 496
グループ4 おそらく発がん性がない カプロラクタム(ナイロンの原料) - 1
2)DEHPは内分泌攪乱作用(環境ホルモン)があるのでしょうか?
DEHPは1998年に環境省が定めた『環境ホルモン戦略計画Speed‘98』の内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質(67物質)に取り上げられ平成12年度には哺乳類や生態系への影響を評価するための動物実験を行う物質の1つに選定され、哺乳類及び魚類を用いた内分泌攪乱作用に関する試験が行われました。その結果、DEHPには『低用量(文献情報等により得られた人推定暴露量を考慮した比較的低濃度)での明らかな内分泌攪乱作用は認められなかった』という評価が報告されています。
環境省のExTend2005(化学物質内分泌攪乱作用に関する環境省の今後の対応方針について
  • メダカ試験の結果⇒DEHPは頻度の低いものの精巣卵の出現が確認されたが受精率に悪影響を与えるとは考えられず、明らかな内分泌攪乱作用は認められなかった。
  • ラット改良1世代試験の結果⇒文献情報により得られたヒト推定暴露量を考慮した用量(4用量群で実施)での明らかな内分泌攪乱作用は認められなかった。
3)環境ホルモン戦略計画Speed98にリストアップされている67物質は、すべて内分泌攪乱作用があるのでしょうか?
A:内分泌攪乱作用を有すると疑われる科学物質としてリストアップされている67物質は、内分泌攪乱作用の有無が必ずしも明らかになったものではなく、あくまでも、今後優先して調査研究を進めていく対象として選定されたものですが、しばしば「環境ホルモン」と誤解を招いている状況です。ビスフェノールA、ノニルフェノールは内分泌攪乱作用があると断定されましたがDEHPは2)内分泌攪乱作用は認められないという環境省の見解がありました。
4)ガーデンホースに通した飲料水を飲んでも体に問題はないでしょうか?
A:流水条件下で過酷温度条件(60℃)での溶出データーを採用しても溶出物質の暴露量はTDI(耐容一日摂取量)、水道水質基準値を相当程度に下回っており、健康への影響が直ちに生じる事はないと考えられます。
なお、過酷温度条件でホース内に飲料水を長時間放置した場合は、物質の溶出量が増加し、上水道水質基準を上回る可能性があります。但し、このような過酷条件は通常の家庭の使用は殆どないと考えられますが、ホースに長時間滞留した飲料水は直接飲用に用いず、ホース内部の水が全て置換されるまで通水してから使用することをお勧めします。
5)日本ビニルホース工業会として環境ホルモン対策はしていますか?
A:環境ホルモンに影響があると断定された、ビスフェノールA、ノニルフェノールについては2001年より自主規制をしています。(配合設計数値としてはゼロの状態)
6)厚生労働省告示第267号(平成14年8月2日)はどんな法律ですか?
A:食品用の器具及び容器包装並びに食品衛生法で規定するおもちゃについて、特定のフタル酸エステル類を原料として用いたポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂の使用を規制するため、これらの原材料の改正をしました。
改正内容は、油脂又は脂肪性食品を含有する食品に接触する器具又は容器包装の原材料は、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を原材料として用いたポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を原材料として用いてはならない。施行期間は、平成15年8月1日より。
7)厚生省告示第20号はどんな法律ですか?
A:食品用の器具及び容器包装に使用される合成樹脂全般について規制したもので、食品の種類により含有量、溶出量の基準を決めている。例えば、ポリ塩化ビニル規格試験では『材質試験』としてカドミウム、鉛、ヂブチルスズ化合物、クレゾールリン酸エステル、塩化ビニル、『溶出試験』では重金属、過マンガン酸カリウム消費量、蒸発残留物(試薬として、N-ヘプタン、20%アルコール、4%酢酸、水)の基準を決めています。
食品・添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部が昭和57年2月16日厚生省告示第20号によって改正された。
材質試験 溶出試験
カドミウム 100 重金属 1
100 過マンガン酸カリウム消費 10
ヂブチルスズ 100 n-ヘプタン 150
クレゾールリン酸エステ 1000 20%アルコール 30
塩化ビニル 1 30
  4%酢酸 30
単位:ppm以下
8)油脂及び脂肪性食品とはどんな食品ですか?
A:油脂及び脂肪性食品は食品または食品表面の油脂食品がおおむけ20%以上あって、乾燥した固形食品以外の食品のことです。
『具体例』⇒植物油・ラード・牛脂・ショートニング・バター・チーズ類・マーガリン・ソーセージ類・ベーコン・牛脂肉・豚脂肉・鶏脂肉・牛肉(一部)・豚肉(一部)・魚貝類油漬・まぐろ生脂身・マヨネーズ・ドレッシング・カレー・カレールウ・レバーペースト・ラー油・てんぷら・あぶらあげ・生あげ・がんもどき・さつまあげ・コロッケ・メンチ・とんかつ・肉だんご・フライ・食肉野菜煮込み・いなり寿司・シチュー・シューマイ・チョコレート類・ドーナッツ・かりんとう・あげせんべい・ポテトチップ・ミートパイ。
※食品中の油脂含量の判断にあたっては、最新の科学技術庁資源調査編『日本食品標準成分表』を参考にしてください。
油脂又は、脂肪性を含有する食品としては、上記食品だけでなく、それらを用いた食品、例えば油脂で炒めたり、焼いたり、揚げたり、炒めてから煮た食品、及び脂肪性食品を材料としている食品がすべて含まれます。
9)乳製品(牛乳他)は、油脂及び脂肪性食品の分類に入るのでしょうか?
A:(臭気の定性等技術的知見につき検討中)
牛乳などの乳製品は、油脂及び脂肪性食品の分類には入らないため法的には特別な規制はありませんが、使用条件等によりホースの臭いが食品に移ることがあります。また、洗浄の際の消毒液(次亜塩素酸等)がホースに移ることもありますので十分配慮の上、ホースを選択することをお勧めいたします。
また、食品の分類が不明な場合やどんな食品で使用されるか不明な場合は食品衛生法の法規制がありますので注意が必要です。
10)食品衛生法に基づく規格基準とは何ですか?
A:食品衛生法では、食器、調理器具、食品製造器具などの『器具』、食品を入れたり包んだりするものを『容器包装』と称して、食品や食品添加物に準じて規制をしています。
法律の主な流れとしては、昭和34年12月28日に厚生省告示第370号で『器具及び容器包装の規格基準』が定められました。その後昭和57年2月16日の厚生省告示第20号でこの規格基準が全面改正され、『器具及び容器包装の規格基準』は一般規格と個別規格に分類されました。これらの規格基準は、あくまで『容器及び容器包装』という製品に係るものであり、プラスチック材料に適用される規格基準ではなく、ここでの『材質試験』は製品中に存在する安定剤、可塑剤、モノマーなどの含有量についての試験基準です。『溶出試験』は容器包装に水、酸性食品、脂肪性食品等を入れたときを想定して、食品中に溶け出してくる化学物質の量を試験するものです。
また、平成14年8月2日に厚生労働省告示第267号で油脂または脂肪性食品等を含有する食品に用いる器具や容器包装には、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を用いたポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を原材料として用いてはならないと決められています。
なお、食品衛生法は『材質』や『溶出』を想定するものであり、臭気や味等の項目はありませんので使用に当たっては十分な配慮が必要です。
また日本ビニルホース工業会として臭気や味等の項目については原案を作る予定をしております。
11)Speed‘98と65物質とはなんですか?
ASpeed‘98は、Strategic Programs on Environmental Endocrine Disruptorsl 1998年の略です。環境省は、1997年7月の『外因性内分泌攪乱化学物質問題に関する研究』による中間報告を踏まえて、内分泌攪乱化学物質問題についての環境省の基本的な考え方及びそれに基づき今後進めていくべき具体的な対応方針などを収録するものとして『環境ホルモン計画Speed‘98』を1998年5月にまとめました。この報告書にある『内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質』としてリストアップされたのが65物質です。このリストの註には、『これらの物質は、内分泌攪乱作用の有無、強弱、メカニズムなどが必ずしも明らかになっておらず、あくまでも優先して調査研究を進めていく必要性の高い物質群であり、今後の調査研究の過程で増減することを前提としている』と明記されています。
12)ダイオキシン類は何を燃やしても発生しますか?
A:塩素は自然界や食品などいたるところに存在するため、ダイオキシン類は生ゴミ、紙、木材、色々なプラスチックスなどあらゆるものが不完全燃焼した場合に発生する可能性があります。しかし、適切な焼却を行えばダイオキシン類の発生は大幅に抑えることができます。政府も関係省庁共通のパンフレットにおいて『適切な対策や管理を行っている場合には、塩素を含むゴミの影響は相対的に少なく、燃焼状態や排ガス処理の状況等の方がダイオキシン類濃度に大きな影響を及ぼすと考えられ、適切な対策や管理により排出濃度を抑えることができる』との共通見解を示しています。
13)塩ビ(PVC)は環境に貢献していますか?
ACO2問題(CO2の削減)、省エネルギーー(他樹脂に比べて)、石油資源の節約、森林資源の保護に貢献しています。また、長寿命でリサイクルが容易なのも環境に貢献しています。
14)TDI(耐用1日摂取量)、ADI(許容1日摂取量)とはどういう意味ですか?
ATDIは、健康環境の観点から、一生涯摂取しても1日当たりこの量までの摂取が耐容されると判断される量。本来混入することが望ましくない環境汚染物質などの場合に用い、摂取する利益がないことから、一般に暴露は最小限に抑えることが望まシートされています。
また、ADIは、健康環境の観点から、一生涯摂取しても1日当たりこの量までの摂取が許容されると判断される量。それを使用することによる利益があり、意図的に使用される物質の場合に用いられます。
15)塩ビ(PVC)は、どんな製品に使われていますか?
A:塩ビは基礎産業から最先端の医療分野まで、さまざまな分野で活躍しています。
例)ホース・パイプ・継手・雨樋・波板・窓枠・サイディング・壁紙・床材・電線・平板・シート・農業用ビニルフィルム・ラップフィルム・文具・おもちゃ・サンダル等
16)ホースの廃棄は、どのようにすれば良いですか?
A:ホースを廃棄する場合は、地方自治体が定める規定に従い、プラスチック廃棄物として廃棄してください。
17)塩ビのリサイクルはどのようにしていますか?
A:日本では年間200万トン近くの塩ビが使用され、80%以上を耐久製品として利用、一方、塩ビの排出量は、年間100万トン強と見込まれ、そのうち30%以上がリサイクルされています。
特にマテリアル・リサイクル(製品として再利用)では、農業用ビニルハウス(農ビ)、パイプ、電線被覆材などを中心に進められ、塩ビは使用済みプラスチックのマテリアル・リサイクルとしてはプラスチックの中で最も進んでいます。
ホースについても、今後マテリアル・リサイクルを推進する方向で検討をしております。国を挙げて推進している『資源循環型社会』の実現に向けて、来年度より工業会でマテリアルリサイクルを検討する予定。
18)ホースに含まれるDEHPはどのくらい水に溶けるものですか?
A:ホースからの水中へのDEHPの溶出量はヒトに対してTD1を下回ることが確認できています。(JPECで平成15年度にテスト済)
また、新しい水道基準の水質管理目標設定項目(案)には0.1mg⁄ℓとありますが、これに比べても一桁低い数値になっています。
19)DEHPは環境にでるとどのような転換(fate)を遂げるのですか?
A:フタル酸エステル類は好気性、嫌気性の雰囲気中で広範囲のバクテリアや放線菌によって分解することが多くの報告で示されている。下水汚泥を用いた標準好気性生分解試験法でフタル酸エステル類は28日以内に50%が分解される。
20)DEHPDINPで安全性に差はあるのですか?
ADEHP/DINP安全性評価に関する既存Data
TDIDEHP 40µg⁄kg⁄dayDINP 150µg⁄kg⁄dayで差があるとは言えないという考えが我々工業会の統一見解であります。
21)PRTR法とはどのような法律ですか?工業会としてはどのように係わっていますか?
APRTR制度とは、毎年どんな化学物質がどこかラードれだけ排出されたかを知るための仕組みでPollutant Release and Transfer Resisterの略です。
有害性のある化学物質の環境への排出量を把握することなどにより、化学物質を取り扱う事業者の自主的な化学物質の管理の改善を促進し、化学物質による環境の保全上の支障が生ずることを未然に防止することを目的として制定されました。
ヒトつヒトつの化学物質に基準値を設けて規制する従来の方法とは異なり、多くの化学物質の排出量などの情報を公開することによって社会全体で化学物質の管理を行おうというものです。
当工業会としても使用している化学物質の種類や排出量を把握することで、無駄を省くなど自主的な管理をし、排出量の削減の目標をたて削減努力を致します。
『参考資料』
  • 環境省:内分泌攪乱作用化学物質への環境庁の対応方針について(環境ホルモン計画Speed‘98‐2000年11月版)
  • 環境省:『平成14年度第1回 内分泌攪乱作用化学物質問題検討会について』(2002年6月14日)
  • 可塑剤工業会(可塑剤インフォメーション 臨時号 平成15年2月号)
  • 塩ビ食品衛生協議会:塩化ビニル樹脂製品等の食品衛生の係る自主規制
  • 塩ビ工業・環境協会(塩ビとリサイクル)2002年・春
  • 塩ビ工業・環境協会(環境優良素材事典(塩ビ編))
  • 塩ビ工業・環境協会(知って得する暮らしの科学(ダイオキシン編))
  • 塩化ビニル環境対策協議会(なるほど塩ビ)
  • PVC Fact Book(2003)(塩ビ工業環境協会)
  • PRTRデーターを読み解くための市民ガイドブック(環境省)
  • 金属石鹸系安定剤及び可塑剤の純水への溶出(平成16年5月、塩化ビニル環境対策協議会)

文字サイズ変更